エラスターゼⅠというのは、膵臓で作られ膵液中に分泌されて十二指腸乳頭部に流れていく酵素です。産生の場である膵臓の異常・流れ出す経路の異常によって、血液中の濃度が変化します。膵臓が著しく破壊される急性膵炎や慢性膵炎・膵がん・膵臓の外傷性変化によって血液中のエラスターゼⅠは上昇します。また、胆嚢や胆道の石・腫瘍・炎症などで膵液の流れが阻害されると血液中に流れ出し、エステラーゼⅠ濃度が高値になります。アミラーゼやリパーゼと同様、消化管穿孔や腹部手術でも高値となり、腎臓での排泄障害を反映して腎不全でも上昇します。このエラスターゼⅠの特徴として、血液中での分解スピードがアミラーゼ・リパーゼよりも遅いというのがあります。従って、病気の進行が速い急性膵炎の評価にはアミラーゼ・リパーゼが適しているとも言えます。しかし、膵がんなどに随伴して起こる膵炎の検出・すなわち膵がんの発見にはエラスターゼⅠがより有効だとされています。膵臓の病気、とりわけ腫瘍を早期に発見するというのは難しく、病気のもともとの正確として腫瘍が発生した早期に大きく広がったり転移したりする為、非常に治療が難しいというのが現状です。お腹の奥深くにある臓器という事もあり意外と症状が出にくいという点も、発見が遅れてしまう原因の1つだと考えられます。検査法の進歩、どのような方に発生したすいのか等、さらなる事実解明により多くの症例で治療が可能となり、予後の改善に至る事が望まれます。