日本における人間ドック及び健康とは、元来感染症の予防が目的であった。そこから時代の移り替わりと共に、がんなどの生活習慣病・代謝性疾患・動脈硬化性疾患などの予防へと発展していった。加えて、今日の日本は長寿大国となり、そのことが新たな課題をもたらしている。そのうちの一つが、高齢化社会に伴う介護・衰えていくことにより起こる低栄養状態「フレイル」・そして認知症疾患などの増加であるといえるだろう。これらを適切に評価し、且つ予防・対策に勤めていかなければならないのであるが、健診・人間ドックの伝統的検査項目だけでは十分に把握・評価しきれていないのが現状である。
また、実際の在宅医療においては「寝たきりの状態ではあるも、一般健診項目上では異常無し」というケースもしばしばだ。これらの加齢に伴う健康問題は、該当しない年代層の健診で異常が無ければ健康と判断されることも多い。しかしながら、その時点でリスクが潜んでいる可能性だってある。適切な「健康」という判断は何なのだろうか。この問題も解決すべき点であるだろう。この背景を受けて、導入されたのが運動器ドックなのである。
この運動ドックとは、骨・関節・筋肉量を含めた体組成を評価し、尚且つ予防に繋げていくことを目的として行っている。問診によって食事や日頃の運動習慣を詳細に調査していくものである。運動若しくは身体活動の種類・強度・頻度・一日の内じっとしている時間はどれだけあるかといった項目を調査していくのであるが、そのほか関節痛や腰痛の有無などの項目も合わせてみていく。この問診結果に加え、腹部CT・内臓脂肪面積測定や各種代謝マーカーを測定することで、筋・骨格に関する病変だけに留まらず代謝疾患という面からも運動介入の検討を行うための指標となっている。